コラム/インタビュー

万博をもっとおもしろく!

第八回

【シンガーソングライター 嘉門タツオ × ワントゥーテン 渡邊俊/森江里香】
ドバイ万博から始まるアイディアの“循環”でよりよい世界を目指す

ドバイ万博から始まるアイディアの“循環”でよりよい世界を目指す ドバイ万博から始まるアイディアの“循環”でよりよい世界を目指す

1970年の大阪万博以来、万博に魅了され続け、もはや“万博マイスター”とも呼ばれるシンガーソングライターの嘉門タツオさんが、いよいよコラムに登場です。 上海、ミラノ、アスタナ等の万博では日本館の公式サポーター、ドバイ万博 日本館でもPRアンバサダーを務める嘉門さんが今回出会ったのは、日本館のデジタル施策を担う、株式会社ワントゥーテンの渡邊俊さん、森江里香さん。 デジタルという視点で“新しい万博”に関わってきたお二人と、万博の今昔を知る嘉門さんが語るドバイ万博とは? そして、2025年の大阪・関西万博への思いを伺いました。

万博とは? 変わること、変わらないこと

渡邊

僕はもともと、万博は自国のアピールをする場所、という印象を持っていたんですけど、 実際にドバイ万博に行ってみたら、自国のアピールよりもパートナーを探しているような空気を感じたんです。

嘉門

技術を競い、それを世界の皆さんに見てもらう場であるのは前提ですね。 でも昔から、世界各国の人たちのとても友好的な姿と接する機会でもありましたよ。

たしかに、日本館レストランの「スシロー」のうちわを持って歩いていたら、海外の人に声をかけられました。 あとは、他国の展示に並んでいるときにも「日本人か?」と聞かれて。 そうだと答えると、日本のアニメへの愛を熱く語ってくれました(笑)。 日本が大好きという方にたくさん出会えたのですごく嬉しかったですね。

嘉門

日本文化、とくにアニメや漫画は世界的なもんですからねぇ。

渡邊

行ってみたら、偶然の出会いがいっぱいありました。 そこから興味を持って調べるので知識が広がりますし、勉強になりました。 僕らは今回初めて万博に触れて、いくつかの国についてほとんど知らないことに気づかされたんです。

たとえばカザフスタンは、かなり先進的な国づくりをしていて、未来都市のような構想を持っています。 そのことをカザフスタン館に行って初めて知りました。 そこから興味が湧いて調べてみたら、国ができてからまだ30年も経っていないことにさらに驚きました。

嘉門

僕が11歳だった1970年の大阪万博では、「ソ連館」やったからね。 そのあとロシアになって、カザフスタンやキリギスとかが独立していって。 個々の文化は実際には長年存在したはずで、 本来この民族はこういう文化なんですよっていうのがあらためて伝わっているのが面白い。 それがまさに万博ですよね。

渡邊

今回、僕は日本館のスタッフという立場でしたが、いち来場者としても他のパビリオンを見学して、 今後の自分のキャリアを考えさせられましたし、今後アウトプットしていく企画などにも大きく影響を与えるくらい、 色々な刺激を浴びまくる時間になりました。

嘉門

いまはメディアが発達して世界中の情報を手に入れることができるようになりましたけど、 1980年代頃までは他国のことがほとんどわからなかったんですよ。 だから余計に、万博で受けるインパクトがすごかったですね。 映像も情報も溢れていると、そういうミステリアスな部分がどんどんなくなってくる。 だから渡邊さんも、世界中がどうやってつながっていこうかって模索している印象を受けたんでしょうね。

渡邊

コロナ禍もありますし、必然なのかもしれませんね。 ドバイ万博のテーマ自体が「Connecting Minds, Creating the Future(心をつなぎ、未来を創る)」ですし、 SDGsのように、地球規模の課題が国や企業団体、個人レベルの生活に影響を与え始めているなかで、 意識が変化した出展者が多かったのではないかと思いました。

バーチャル日本館は、課題解決に向けて動くためのプラットフォーム

渡邊

これまでの万博からの変化といえば、日本館に限らず、ドバイ万博全体でバーチャルやデジタルを意識していると強く感じました。 全パビリオンの姿をウェブサイトから閲覧することができますし、オープニングセレモニーはYouTubeでもライブ配信されました。 世情を受けて、行かなくても楽しめる、行かなくてもメッセージが伝わるよう、各パビリオンが工夫しています。

嘉門

とはいえ、その場にいて体験することに勝るのは、なかなか難しそうですよね。

渡邊

そうなんです。デジタルで日本館を表現するとはいえ、ウェブサイトで「体験自体」は絶対に再現できないと思いました。 日本館の各展示は現地で体験してもらうために設計されているので、 展示コンテンツや空間をそのままバーチャル空間上に再現したとしても、あくまで偽物でしかないな、と。 たとえば、スポーツのパブリックビューイングがそうです。会場で観戦する空気感はどうしても味わえません。 だから、パブリックビューイングにはパブリックビューイングなりの楽しみ方が必要です。 今回、このデジタル施策においても同じ考えにのっとって、「ウェブサイトはどんな役割を持つべきか?」ということを、 突き詰めて考えました。

嘉門

すでに日常にあるものについて、「さあ、次はどうする」ということを提示するのがまさに万博ですからね。 1歩先に行っていることをアピールしながら、実際にどう実現するのかが大事ですね。

渡邊

考えた末、「日本館が世界に伝えたいことは何か」という目的に立ち返ってつくったのが、2つのウェブサイトです。 日本館のテーマは「アイディアの出会い」ですが、そもそもその単語が何を意味するのか、パッと思い浮かばない方もいると思います。 まずはそれに対して、他国の文化や思想、技術を取り入れながら進化してきた日本の歴史を見せ、これからも地球課題を解決し、 未来に向かっていくためにはそういう“出会い”が大事だよね、と伝えて共感を引き出す「2020年ドバイ国際博覧会 日本館 特設サイト」というサイトを用意しました。 日本館のメッセージを凝縮した1本の映像がオープニングで流れます。1分ほどでメッセージが伝わるので、SNSで共有しても閲覧しやすい。 これこそバーチャルの使いどころだと思いました。

「2020年ドバイ国際博覧会 日本館 特設サイト」

そして、もう1つの特設サイトが「循環 JUNKAN -Where ideas meet-」です。 コンセプトは「Share Your Voice, Make Our Future.」。声をシェアするだけで未来をつくる1歩になるということを伝えています。

「循環 JUNKAN -Where ideas meet-」

渡邊

メッセージを伝えるのが「日本館 特設サイト」、 そこから実際にアイディアを掛け合わせるのが「循環」です。 現地の日本館のシーン6では、来場者が参加して課題やそれを解決するためのアイディアをメッセージとして入力することができるのですが、 「循環」で投稿していただいた文章もシーン6のモニターにランダムに表示されます。

「循環」は、 サイトや日本館を訪れた人が自らアクションしたくなるような「きっかけ」を与える場を目指しています。 地球規模の課題を普段から熱心に考え続けるモチベーションはなかなか維持できませんが、たとえば掲示板を見るように、 いろいろな人の考えを垣間見ると気づきがあると思うんです。 「循環」がそんな「未来につながる掲示板」のような役割になれればいいなと思っています。 さらに、見て終わりではなく、気づきや刺激をもらった人が、直感的にアクションに移せるように工夫しました。

渡邊

いまは英語、日本語、アラビア語と言語が限られていますが、どこでも誰でも自由にアイディアを出し合える、 課題を指摘し合える、そして共有し合えるプラットフォームになればいいと思っています。 それを見た人が「動く」ことがポイントで、そのためのつながりをつくるのがデジタルの役割だと思います。

嘉門

問題提起ですね。僕の場合、そういうメッセージ性のあるものは歌としてパッケージングしてきました。 そのほうが絶対的に伝わると思っているので。そういうことにも有効利用できるかも? 歌にしたら絶対面白いと思う。

渡邊

Co-Creation(共創)と呼ばれるものですね。すごく素敵なことだと思います。

意識に入ってきますよね、歌にするだけで。

2025年以降に目指すのは「楽しい日本」?

嘉門

4年後の大阪・関西万博ではもっとデジタル化が進むんでしょうね。 最初に会場の面積を聞いたときに、1970年大阪万博の約半分くらいだったので「ありゃっ」と思ったんですけど。 デジタルを活用するなら、広ければいいという問題でもないですし、十分いいもんができそうですね。

渡邊

デジタル技術の進化もそうですが、通信のスピードや送れるデータの容量も変わると思います。 あとはAIが加わってくると、僕らの能力が拡張されたり、膨大なデータがすごくシンプルになって僕らの手もとに届いたり。 便利なこと、楽しいことがいろいろとあるような気がしますね。「循環」も機能を増やしていければと思っています。 大阪・関西万博との共同プロジェクトで行っているので、2025年につながるように、どんどん使われて、どんどん広がって、 自由に使ってもらって、そういう「地球の未来をみんなでよくするためのSNS」のようなものに進化していけたら、 このサイトがすごく意味のあるものになると思います。

嘉門

豊かな日本にいるとわからないことがある。 たとえば、地球環境も大事ですけど、いま食べるものがないという生活的に切実な問題に直面している国や地域があって、 日本ですら、子どもたちの貧困という問題があるじゃないですか。 僕自身はそういうメッセージを歌に乗せて形にする側だけど、そもそも、こういう考えるきっかけになるデータベースをつくったのがすごい!

渡邊

まだまだ、最初の1歩だと思います。 色々と、越えなくてはいけない制約や足りていない機能など課題が残っています。

今後は“AIによる文章解析”を加えることでで、投稿された課題とアイディアを自動マッチングさせて、 投稿した人々同士を結びつける機能を付与したり、自動翻訳機能の進化によって言語の壁がなくなったり、 いまよりもっとストレスなく、誰もが参加できる形へと進化させられるんじゃないかなと思います。

嘉門

それを踏まえて、大阪・関西万博の頃には、日本をもっと楽しくできないだろうか。 堺屋太一先生が、「戦前は強い日本を目指し、戦後は豊かな日本を目指した。 次は楽しい日本にならなければならない」ということをおっしゃっていて、まさにその通りだと僕は思っています。 今後は「楽しい日本」というのがテーマだと思いますね。

渡邊

確かに、いまは情報がたくさんあるのに「退屈」がすごく増えている感じはありますよね。 なんだか満たされないというか。それも社会課題のひとつ。有意義な時間を過ごすことや、生きているのが楽しいと感じることに、 僕らはどうやってアプローチできるでしょうか。

嘉門

難しいね。高齢者のエンターテインメントが少ないことや、子どもたちが生きづらいようなニュースを目にすると、 もっと全体的に、楽しくできないかって考えてしまう。

渡邊

たとえばメタバース(仮想現実空間)で世界が広がったら、少し行動が変わったり、時間の過ごし方が変わったりするかもしれない。 2025年に向けても、それ以降も、僕らはそういうことを模索し続けるべきなんだとは思います。 コミュニティーごとの価値観というか、これが面白いんだっていうものを。

嘉門

コミュニティーという考え方はいまに始まったことではなくて、昭和の頃から街頭でプロレスを見て狂喜乱舞している人がいたし、 スポーツや音楽は熱狂で人をつないでいる。一時、「ポケモンGO」が流行ったときも、みんな一体になって楽しんでいましたよね。 これからはデジタルも含めて、コミュニティーが多様化していくのかな。

渡邊

最初の話に戻りますが、そういうコミュニティーや自分が全然知らないものに出会えるのがまさに万博ですよね。 単純に楽しいですし。

嘉門

行けば絶対に楽しい! 今回、日本からドバイに行くのは少しハードルが高いとしても、渡邊さんたちのデジタル施策も含め、 僕らはドバイ万博のレガシーをきっと2025年につなげるので、ぜひ大阪・関西万博に来てほしいです。

渡邊

万博の継承が続いて行くためにも、ドバイの地で日本を背負ってがんばっているたくさんのすごい人たちがいることを知ってほしいですし、 現地に行けない人も応援してくれると嬉しいです。

プロフィール

嘉門 タツオ

嘉門 タツオ

シンガーソングライター

1959年3月25日大阪府茨木市生まれ。1970年の日本万国博覧会(大阪万博)を小学生で体感、多大な影響を受けた。万博バッジ集めを以降の万博でも続ける。CD、ラジオ、テレビ、ライブ、執筆…と活動の幅は広く、各所に「万博」への思いが見れる。上海・ミラノ・アスタナ等で各公式サポータをつとめ、ドバイでもアンバサダーに任命いただき、2025年大阪・関西万博への思いも込めて活動していく所存。各国の言葉での歌披露も好評。

渡邊 俊

渡邊 俊

Scene5, 6システムデザイン / バーチャル日本館
株式会社ワントゥーテン プロデューサー/プランナー

1985年生まれ。リアルもバーチャルも。広告プロモーションもサービス&プロダクト開発も。様々なメディアを扱うイベント領域での経験を基盤に、手法を複合的に組み合わせたプロジェクトのプロデュース・プランニング・ディレクションを行う。
モットーは「なんとかなるし、なんとかする。」「ひとりじゃ何もできまへん。」
主な受賞歴にCannes Lions、One Show、 Adfest、Spikes Asia、ACC賞、国際カスタムカーコンテスト、Asia Pacific Interior Design Awardなど。

森江里香

森江里香

Scene6システムデザイン / バーチャル日本館
株式会社ワントゥーテン プロデューサー/ディレクター

1989年生まれ。リアルとバーチャル双方で、ユーザー視点に立ったコンテンツ制作を推進。Web制作の経験を強みに、プロモーション、サービス開発、インスタレーション、ガジェット制作、ライブ演出、謎解きシステムなど多岐に渡るプロジェクトのプロデュースおよびディレクションを行う。

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